
独自燃調とは?燃料費調整額との違いと注意点をわかりやすく解説【2025年最新版】
独自燃調(独自燃料費調整額)とは、簡単に言うと「電気の市場価格に応じて電気料金が変動する仕組み」のことです。
2016年の電力自由化をきっかけに、旧一般電気事業者以外の電力会社、いわゆる新電力会社が登場しました。その新電力会社の多くが電気料金に「独自燃調」を組み込んでいます。
独自燃調という言葉を見聞きしたことはあっても、その意味や仕組みまでご存じの方は少ないのではないでしょうか。
特に、法人契約や新電力を検討している方にとっては、「独自燃調」という項目が電気料金にどのように影響するかを知ることは、コスト予測やリスク回避の観点から非常に重要です。
この記事では、独自燃調の概要から燃料費調整額との違い、独自燃調を導入する電力会社が増えている理由、独自燃調の注意点まで解説します。
目次[非表示]
独自燃調(独自燃料費調整額)とは
独自燃調とは、電力会社が日本卸電力取引所(以下 JEPX)や発電事業者から電気を仕入れる際に発生するコストを、利用者の電気料金に反映するための金額です。主に、一部の“自前の発電所を持たない新電力会社”が導入しています。
JEPXや発電事業者から仕入れる電気の市場価格は、燃料価格や電力需給、天候、時間帯、季節などによって30分ごとに変動します。ときには条件が重なって大きく高騰することもあり、そうなれば電力会社の経営に影響が及びます。
仮に電気料金を固定にしていた場合、電気の市場価値が上がると仕入れコストも上昇するため、電力会社が損益を計上することになります。状況次第では電気の基本料金を値上げせざるを得なくなり、利用者にまで負担が及ぶことも考えられます。一方で電気の市場価値が下がると電力会社は利益を得やすくなりますが、電気の基本料金は据え置きのため利用者は結果的に損をしてしまいます。
電力会社と利用者、両者が損をせず適切な価格で電気を購入・利用するために、市場価格の変動分を1kW当たりの単価に換算し独自燃調として請求しています。
独自燃調(独自燃料費調整額)と燃料費調整額の違い
独自燃調と類似するキーワードに「燃料費調整額」があります。どちらも電気料金に反映される金額ですが、それぞれで役割が異なるため、混合しないよう違いを理解しておくことが重要です。
燃料費調整額とは
燃料費調整額とは、石油や石炭、液化天然ガス(LNG)など、火力発電に用いられる燃料の価格変動を電気料金に反映するための金額です。
電力会社各社が定めた「基準燃料価格」と、特定の3ヶ月を対象とした各燃料の貿易統計価格の加重平均値を表す「平均燃料価格」の差が電気料金に反映されます。
なお、燃料費調整額については、こちらの記事でも解説しています。
独自燃調と燃料費調整額は何が違う?
独自燃調と燃料費調整額には、以下のような違いがあります。
▼独自燃調と燃料費調整額の違い
独自燃調 |
燃料費調整額 |
|
参照値 |
電気の市場価格 |
火力発電に用いられる燃料の価格 |
調整の タイミング |
燃料調達後 |
燃料調達前 |
参照値の変動に 影響する要素 |
燃料価格や電力需給、天候、時間帯、季節など |
国際情勢や為替、電力需給など |
算定期間 |
主に電気料金に反映する前月
(※電力会社によって異なる)
|
電気料金に反映する3~5ヶ月前の3ヶ月 |
上限 |
なし |
あり
(※従量電灯プランや規制料金プランのみ)
|
このように、燃料費調整額は事前に計算された燃料価格ベースの制度であるのに対し、独自燃調はリアルタイムの電力市場の価格変動を反映する仕組みであり、価格変動の影響度に差があります。
特に大きな違いは、参照値とそれに伴う調整のタイミングです。
独自燃調は「電気の市場価格」を参照しており、これはすなわち「調達した燃料により発電された電気の価格」です。調整が入るタイミングでいうと燃料調達後ということになります。一方で燃料費調整額は「火力発電に用いられる燃料の価格」を参照しており、調整が入るタイミングは燃料調達前です。
このように、参照値と調整のタイミングが異なるため、独自燃調と燃料費調整額は金額にも違いが現れます。
独自燃調(独自燃料費調整額)を導入する電力会社が増えている理由とその背景
近年、独自燃調を導入する電力会社が増えており、その理由には「電気の市場価格の高騰」が関係しています。
日本国内の慢性的な電力供給不足、円安・ウクライナ情勢による燃料価格の高騰などにより、電気の市場価格は近年高値で推移しています。
電力会社のなかでも電力自由化以降に参入した新電力会社は、自社に発電機がないことが多く、JEPXや発電事業者から電気を仕入れているケースがほとんどです。そのため、電気の市場価格が高騰している今、経営に直接的な影響が及んでいます。
これでは、電力会社は電気の仕入れコストを満足に価格転嫁できません。そこで注目を集めたのが独自燃調です。電気の仕入れコストをタイムリーに電気料金に反映できるため、経営安定化の手段として独自燃調を導入する電力会社が増えています。
独自燃調導入の背景とメリット
特に以下のような理由から、独自燃調は新電力各社にとって重要な仕組みとなっています。
- 市場価格の変動を即時に電気料金へ転嫁でき、赤字リスクを回避しやすくなる
- 一般的な「燃料費調整額」ではカバーしきれない短期的な価格変動への対応が可能
- 利用者側も、市場価格が安いときには恩恵を受けやすくなる
- 契約条件を明示すれば、価格の透明性を保ちつつ導入できる(競争力を損ねにくい)
今後もJEPX価格の高騰リスクが続く限り、独自燃調の導入は経営の安定性と利用者保護の両面で有効な手段とされ、新電力を中心に広がりを見せています。
独自燃調(独自燃料費調整額)の注意点
独自燃調には注意点があります。自社にとって不利な契約を結ばないためにも、ご確認ください。
電気料金が高くなる場合がある
独自燃調が参照している電気の市場価格が高騰した場合、その分電気料金も高くなります。特に近年は国際情勢や為替の影響で電気の市場価格が高騰傾向にあるため、電気料金の負担も大きいといえます。
たとえば、2023年夏の猛暑時には、電力需要の増加によりJEPXのスポット価格が大幅に上昇し、電気料金に影響を及ぼしました。
経済産業省 資源エネルギー庁の資料によると、2023年度のJEPX平均スポット価格は11.71円/kWhで、前年度よりも高い水準で推移しています。
独自燃調が導入されている契約では、こうした価格上昇が即座に電気料金へ反映されるため、短期間での負担増につながることもあります。
二重請求されていることがある
新電力会社によっては、独自燃調と燃料費調整額の両方を電気料金に含めていることがあります。この場合、本来の電気料金よりも高くなるため、支出がより大きくなってしまいます。
二重請求を避けるには、契約前に電気料金の内訳を確認することが重要です。
提示料金に含まれていないことがある
電力会社を見直す場合、料金比較サイトを活用することもあるかもしれませんが、そこで提示されている料金には独自燃調が含まれていないこともあります。
料金比較では安価でも実際に支払う金額は高いケースもあるため、必ず公式ホームページで詳細を確認するようにしてください。
まとめ
この記事では、独自燃調について以下の内容を解説しました。
- 独自燃調とは、電力会社が電気を仕入れる際に発生するコストを電気料金に反映するための金額
- 燃料費調整額との大きな違いは「参照値とそれに伴う調整のタイミング」
- 電気の市場価格の高騰により、独自燃調を導入する電力会社が増えている
- 独自燃調が導入されている場合、高額請求や二重請求のリスクがあるため、契約前に電気料金の内訳を確認することが重要
自前の発電所を持たない新電力会社を中心に、独自燃調の導入が広がっています。燃料費調整額と似ていますが、意味や仕組みは異なるため、それぞれについて理解を深めた上で電気料金を管理することをおすすめします。
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